大人の発達障害
発達障害の方々の中には、親や学校に守られている児童青年期には目立たないまま大人になられる方もいます。多くは軽症な方々、いわゆるグレーゾーンと言われる方々です。就職して会社の業務で何かおかしいと御自身が気づく、あるいは一人で暮らすようになって生活がコントロールできずおかしいなと思う、場合によっては結婚して、日常の中で「どうしてそんなことに気がつかないの、段取りができないのはどうして?」と責められる、お子様が生まれて生活が回らず気がつく、など様々な日常の中で気づかれます。うつ病や摂食障害、強迫症など合併症で受診し、背景にある発達障害を医師から指摘される方もいらっしゃるでしょう。
大人の発達障害には大きく分けるとADHD(注意欠如多動症)とASD(自閉スペクトラム症)があります。LD(学習障害)もありますが、学童期に問題になることが多いですね。
わたくし共の外来には、不注意や衝動的な行動、片づけられない、仕事の段取りがつけられないなどに悩まれ、そのことがご家庭や仕事場で問題となり、受診される方がいらっしゃいます。一方では、人の気持ちがわからない、KYだと批判される、仕事がうまく進まないなどと悩まれ、上司から発達障害ではないのかと言われたと受診される方もいらっしゃいます。幼少期には少し乱暴だけど元気でいい子と言われていたけれど、職場では丁寧さに欠ける、雑などと批判され、朝礼で些細なミスをいつも指摘されると落ち込んで、休みがちになり、うつ病ではないかと受診される方もいます。
ADHDの有名人にはエジソンやリンカーンがいますが、ADHDの方はアイデアが豊富で行動力があるという長所もあります。思いついたらすぐすることが、衝動的で一方的な行動にも見えます。ASDの有名人にはアインシュタインがいますが、例の舌をペロッと出した肖像画をイメージされる方も多いのではないでしょうか。思いつきは天才的ですが、人の思惑や気持ちはどこへやらということがしばしばあります。
親や学校に守られている児童青年期には目立たないまま大人になり、一人暮しで破綻したり、結婚してびっくりされたりする方もいます。パートナーに何もわかってもらえないとうつ状態になり受診された過程の中で、自身の発達障害が診断された方もいらっしゃいます。
よりよい人生への登り方は様々ですが、わたくし共は心理職や精神保健福祉士と協働して伴走できたらと願っています。